主役は最後にやってくる話

久々にー!

映画館にー!

行ったー!

 

やっぱいいすね、映画館。

見てきたのはこれ

 

 

f:id:DABUBELL:20200921234133j:plain

wwws.warnerbros.co.jp

 

ダークナイトの功績によりハリウッドで何撮っても許される男、

泣く子も黙る(重低音で気絶するため)クリストファー・ノーランの最新作、

時間が巻き戻ったりするサスペンス映画、TENETでございますね。

  

ネタバレあり感想です。

 

 

 

 

 

 

 

TENET。時間を逆行する超テクノロジーを巡って、

CIAのスパイを辞めて謎のタイムパトロール隊に入隊した黒人男性が活躍したり、

ビルを逆バンジーからの正バンジーしたり、

美人な子連れママにやたら優しくしたりして、

最終的に世界を救ったり相棒に救われたりする映画。

 

 

時間を巻き戻す技術!ってことで、

序盤に出てきた謎の人物が実は過去に戻った自分だったり、

世界を救う作戦を立てた黒幕が未来の自分だったり、

SFにちょっとでも触ってたら「ああ、見たことあるな」な

お約束のシチュエーションがわりとあるので、

そのへんが明らかになる後半は「ああ、やっぱりね」

とまぁ半ば予想通りに話が進むのでシナリオの意外性みたいなのは薄いんですけど、

 

ただマジで訳わからん時間逆行映像や演出がすごすぎて、

なにこれ!なんかすごい!なに起きてんの!?

みたいなリアクションで脳が消耗して、

これで謎解きまで凝られてたらエンドロールの頃には気絶してたと思うので、

多分これでいいんだと思います。

 

 

基本的に主人公の一人称視点でお話が進みながらも、

主人公は劇中で名前が呼ばれることもなく、

実際名前が設定されてないのを見終わってから知ったんですけど、

更に言えば主人公、名前どころかわりとバックグラウンドなんかもふわふわで、

不思議な時間逆行弾と出会ってからCIAを辞め、

謎のタイムパトロール隊、TENETにスカウトされ、

その足で色んな伝手をたどって時間逆行装置の謎に迫りつつ、

鍵を握る支配的な武器商人に虐げられてる美人さんを救おうとするわけなんですけど、

 

例えばジェームズ・ボンドのようにプレイボーイな面があって、

美人さんには目がないぜ!…わけではなく、

イーサン・ハントのように自分の中の確固たる正義と信念のもとに、

影に隠れた悪を暴く!…わけでもなく、

わりと終始状況に流されつつ、目の前の困った人は放っておけず、

なんか即席で集めてる割には仲間は頼りになり、

(これは仲介役がニールで、TENETの息がかかってるので当然なんですけど)

別にそんな心を通わせたわけでもないヒロインを見守って終わるんで、

 

ふと思い返せばなんで主人公ってTENET信じて世界救ってんだろ…?

みたいな、ジェットコースタームービーあるあるな疑問が湧いちゃったり。

そんな主人公のふわふわ感というか、微妙に地に足ついてない感じが、

時間逆行の不思議な映像の雰囲気に合ってる気すらしてきましたね。

 

 

自分の見知った物理法則の外側から攻撃され、それを駆使した敵と相対し、

自らも物理法則の外側に出ながら戦う、

時間逆行中は周辺の順行する酸素が吸えないから酸素ボンベが必要、みたいな、

ある種2001年宇宙の旅インターステラーなんかの、

宇宙空間に出るときの不安感が時間逆行にあるのがすごく良くて、

 

時間逆行を利用したシチュエーション自体はありきたりだとしても、

劇中になにげなく出てくる台詞やワードもしっかり後半に効いてくる伏線の張り方が丁寧。

例えば序盤に軽いニュースくらいに出てきた事件の現場が事件の鍵を握ってて、

終盤には時間を逆行して向かってる、なんてのは分かりやすいんですけど、

映画のヒロインであるヴィンチグエラ夫人、じゃない、キャサリンが序盤にポロッと話す、

「ボートから見た、船から飛び降りる女性が自由で羨ましかった」みたいな台詞の

キャサリンの目から自由に見えた女性が実は、時間を逆行してそこにいた、

まさに夫の呪縛から脱して自由になったキャサリンその人だったり、

なんてのもお洒落で好きですね。

 

 

主人公の相棒役になるニールのキャラも良かったですね。

立場上色んな事情を知り尽くしてから主人公に接触して、

信用されてるんだかされてないんだか分かんないまま、

それでも息のあったコンビネーションで任務を遂行していく、

飄々とした雰囲気が程よく謎めいてましたね。

 

最後にTENETの真実を伝え、主人公を明日に送り出す、

出会いと別れが反転してるオチもまたありきたりはありきたりなんですけど、

それでも逆行がテーマの作品なら徹底しないと!って話ですよ。

 

そしてヒロインの明日も見送り、映画がエンドロールに入った瞬間に、

真の主役が遅れてやってきてこれがノーラン作品だということを思い出させてくるわけですよ。

 

そう、映画の締めを飾る、特大の、

 

 

バォ-------------ーーーーーーーーーーーン

重  低  音

 

 

いや、なんか物足りないと思ってたんですよね。

TENET、2回見たくなる映画でした。