誰もが知ってるあのゲームを、
誰もが知ってるあの女優で、
誰もが知ってるあのシリーズの監督が撮るんだから、
もう何が起きるかは分かりきってるじゃない。
まさか令和の世にこんな映画が見られるとは思っていなかった(褒め言葉)。
ネタバレあり感想です。
モンスターハンター(2020年の実写映画)。
消息を絶った部隊の捜索に当たっていたレンジャー部隊が突如謎の砂嵐に巻き込まれてしまう。気がつくとさっきまでいた場所とはかけ離れた白い砂の砂漠、そして謎の巨大モンスターの襲撃に次ぐ襲撃。
仲間を失い一人彷徨うミラ・ジョヴォヴィッチの前に現れたのは、見慣れぬ(観客にはお馴染みの)装備を身に着けたトニー・ジャーだった…!
…みたいなカプコンの人気ゲームを原作にした異世界転移SF映画。
監督は「バイオハザード」でお馴染みポール・W・S・アンダーソン。
ざっくり言うとミラ・ジョヴォヴィッチの旦那さんですね。
ここまで書いたら何が起きるか分かりきってるようなもので、ええ、予想通り、いつもの(原作は無視してないのにかけ離れていく世界観)(どんどん死ぬ仲間)(一人だけ生き残る原作にはいないキャラのミラ・ジョヴォヴィッチ)(とにかく嫁をカッコよく撮りたい監督)(終わっても終わってない匂わせ)です。
…待って!帰らないで!
いやいつものだけど!
違うんすよ!
この映画、ただのモンハンの微妙な実写化じゃないんですよ!
(この先、マジで個人的な見解しか言わないよ)
この映画、楽しめるポイント、というか文脈がありまして。
・モンスターハンターシリーズ
・バイオハザード(映画)シリーズ
・80-90年代SF映画
の3つにざっくり分けて説明(言い訳?)させて欲しいんですけど。
まずモンハンシリーズですね。
言わずもがな色んな人間の青春に食い込む狩りゲーですけども、映画では見ての通りモンスターハンターワールド、MHWの要素が強く出てます。
MH世界のキャラクターの衣装や小道具、セットはすごく出来が良くて、ゲームより可愛い受付嬢や、あとは同期ハンター達も再現度がめちゃくちゃ高い。モンスター達のCGにも力が入っていて、ディアブロス亜種やリオレウスはとてもカッコいいし、ネルスキュラはめちゃくちゃにキモい。
マジで砂漠やジャングルで撮影したのもあって、実在感みたいなのはすごくありますし、描写としてもディアブロス亜種の凶暴さやリオレウスの圧倒的な強さはゲームのイメージそのままですしね。(「リオレウスにはまず勝てない」みたいな台詞も、ああやっぱりゲームのハンターっておかしいんだ、みたいな納得してたり)
めちゃくちゃ良い実写化みたいじゃん?
でもこれミラ・ジョヴォヴィッチ主演映画なんですよね!
まぁ一番好き嫌いを分ける要素ですね、ミラ・ジョヴォヴィッチ要素、というかバイオハザードシリーズでおなじみの原作改変。
今回はわりとキャラクター設定は大人しめというか、記憶を失った謎の強キャラでも無ければ、原作にない謎の能力も駆使しません。世界観のほうもなんというか、MHWの世界では無いんですけど、モンスターハンターとしては大きい逸脱はない感じ。(大団長がリオレウス狩るっつってんのに火属性大剣担いでたりするけどまぁそこは、うん)
やっぱり今回でかいのはMHWモチーフだけどMHWではないあたりですね。がっつり力の入った造形のキャラクター達も、冒頭以降トニー・ジャー以外は終盤まで出てきませんし、深く関わることはありません。
トニー・ジャー達が船で調査に来た理由も映画独自の設定のものですし、当然ながらMHWでの主人公、ハンターは出ません。ついでに大団長はヘルボーイです。
映画の前半超を遭難したミラ・ジョヴォヴィッチとトニー・ジャーが敵対しつつやがて打ち解け、徐々に準備を重ねてディアブロス亜種を討伐するまでのイマイチ盛り上がりも進展にも欠けるシーンが占めますし、
なんならハンターはハンターの言葉で喋るのでトニー・ジャーは終始言葉の通じない、純朴な原住民みたいな描かれ方をします。(このへんでトニー・ジャーがよく分かんない東アジアっぽいお祈りをするのもなんかね…ってなる)
で、そのへんの原作改変要素、いつもならハイハイやっぱりね、みたいな感じで受け入れるんですけど、今回ちょっと違うのはこれらに加えてひとつエッセンスが加わってまして、それがさっき上げた3つめ、80-90年代SF映画の文脈なんですね。
この映画、劇伴にちょいちょいDaft Punk的な、エレクトロとかシンセウェーブっぽい音が入ってまして、普通に考えたらモンハンでなんでエレクトロ?って話なんですけど、こういう電子音楽って最近だとマイティ・ソー/バトルロイヤルでそうだったように、80-90年代SFっぽい雰囲気出しで使われてたりするんですよね。
この映画も平行世界の先にいるモンスターに、原始的ながらも独自の技術が発展した装備で固めた戦士、みたいな要素で見ていけば(さらにエイリアンオマージュのようなネルスキュラの巣のシーンなんかも相まって)そういった古き良きSFアドベンチャーの要素で出来ていて、
こういう一見筋違いのような音楽が加わることでただの原作改変要素だったミラ・ジョヴォヴィッチを巻き込んでお互いを補完する形に化学変化が起きて、ただモンスターハンターを実写化するだけじゃない、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のいつもの映画ってだけでもない、「あの頃」のようなノスタルジックを感じるSFアドベンチャーに仕上がってると思うんです。
モンハンシリーズへの思い入れ、実写バイオハザードシリーズの実績、そして電子音楽の合わせ技で、ただのモンハン実写化に留まらない、例えばモンハンを知らなくても「あの頃の雰囲気」で楽しめる人がいるだろうし、ハンターならめちゃくちゃ出来の良い美術とCGで満足できる。当たり判定の大きい、赤点回避をしやすい映画に仕上がってるんですね。
それでもやっぱり原作から逸脱した世界観やストーリーであることには間違いないし、登場人物の絡みの少なさや、まともに喋るのがミラ・ジョヴォヴィッチと大団長だけみたいな情報量の少なさ、(一昔前っぽいゆえに)今更そういうやつやる?みたいな俺たちの戦いはこれからだエンドも不満として言われがちな要素なのは否めないです。
そんな実写モンスターハンターでした。
個人的にはめちゃくちゃ楽しかったけど、オススメはやっぱりしません。